2017年02月20日

勇者のセガレ


著者:和ヶ原聡司
出版社:電撃文庫
勇者のセガレ

主人公は、所沢市の一般的家庭・剣崎家の長男康雄。両親と妹の4人暮らしという平凡な一家だった。ところが、金髪美少女ディアネイズ・クローネことディアナが、異世界から剣崎家のリビングにやってきたことで、平穏な日常は崩れ去ります。当初は、自分自身にゲームのような展開が降りかかると思った康雄ですが、
「私は救世の勇者、ヒデオ・ケンザキ召喚の使者としてやってきました」
召喚対象は父親で、しかも若い頃異世界を救った勇者でした。どう見ても普通の中年のおっさんが「勇者」だったと信じられず、ディアナは「勇者の息子」である康雄に憧れのまなざしを向けてきて、妹は白い目で睨んでくるし…異世界の平和以前に家庭の平和が大ピンチに陥って…

あらすじだけ読むと、コメディのようですが、実際はかなり重苦しい作品になっています。最大の理由は、主人公・康雄の態度。父親が「勇者」で、しかも異世界へ新たな闘いに赴く…当然死んでしまうかもしれない…それを「息子」として心配して反対しているのであれば、理解できたと思います。でも彼の反対の仕方は、どう見ても自己中心的。ディアナへの対応も、単純に自分のイラつきをぶつけているだけのようで…さらに妹の主人公に対する態度も冷たすぎ。正直「この家庭、もとから壊れていたんじゃないか」という感じしか受けません。たぶん、作者は本当は、お互いを思いやっている兄妹だとか、家族愛というのを描きたかったのでしょうが、大失敗していますね。特に前半は読むに値しないくらい崩壊していました。後半になると、康雄が少しずつまともになってきて、妹の態度もわかりやすくなり、ディアナにとって守るべきもの、康雄にとって守るべきものが明確になり、おもしろくなってきます。戦闘シーンにもギャグが入るようになり、コメディとしても一気に盛り上がっていきます。ただ今度は登場人物をうまく使えていない。康雄の中学時代の友人(?)も、ラブコメ枠に入ってきそうで、その手前でウロウロ。もったいないですね。

続編があるのかもしれませんが、ちょっともういいかな。別作品に期待といった感じですね。

★☆
posted by あにあむ at 10:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 電撃文庫

2017年02月07日

迷宮料理人ナギの冒険


著者:ゆうきりん
出版社:電撃文庫
迷宮料理人ナギの冒険 〜地下30階から生還するためのレシピ〜

「やってられるか!こんな毎日…!」
冒険者になりたいけれど、剣や魔法の才能はない料理人の息子・ナギ。実家の食堂の手伝いの日々に絶望した彼は、親に黙って旅に出ようとします。ところが、その瞬間突如として足元に開いた巨大な穴へと滑落。目覚めたのは、謎の地下大迷宮。街全体がダンジョンに崩れ落ちるという未曾有の事態に巻き込まれてしまったのです。一緒に落ちた父が若い時から大切にしていた移動炊具車(屋台)には、炎の精霊・エンヒが宿っており、彼の父親が、昔魔王を封印した英雄の一人だったと告げるのですが、彼はそれを受け入れることができず… とにもかくにも、迷宮から脱出しなくてはならないと、エンヒの記憶と勘に頼って歩きだした彼は、崩落を生き残った戦闘神官少女・リヴと出会います。彼女は「く、殺せ…」系な割には、スライディング土下座もするという、少々残念な性格。しかも崩落の際にメイスとめがねを落としており、あまり役に立ちそうもない。それでも冒険者であることは確かなので、一緒に出口を探すことになります。その後もなぜかヤギのような仮面をかぶった上半身裸の屈強な男・ヤァギなどに出会い、少しずつ真実に近づいていきます。

剣も魔法も使えないナギですが、彼には父からたたき込まれた料理の腕がありました。しかも「食べられるもの」が光って見えるという「メキキ」能力を持っており、移動炊具車で、エンヒの炎を用いて調理すると、おいしいだけでなく付加機能も得られるという、料理の魔法を持っていました。そういや和製RPGでは、料理に付加能力があることが多いですね。

どうやらナギの父親は、日本からの転生者だったようで、エンヒが覚えているレシピは、基本和食です。醤油などの調味料によって、魔法能力が付加されるという設定になっています。まあそれはいいんですが、異世界ということを強調したいがためか、和食→ワ・ショック、治部煮→ジブーニ、鍬焼き→クーワ焼き、ブルーベリー→ブルベリ、ヤギ→ヤァギなどと表記されています。でも、パンはパンだし、小麦粉もそのまま。全体に統一感がないです。中途半端に文字を弄るのなら、やらないほうが…よくある「語尾変形」と同じく、そこでリズムが途切れてしまうのが残念です。まあその言葉を知らない人が聞くと、変形してしまうことは多々ありますけどね。でもこの作品の場合、そこまでこだわっているという感じもうけないので、余計浮いているんだと思います。まったく知らない料理のはずなのに、エンヒのいい加減なレシピでおいしい料理ができているくらいですから。

せっかく料理人という設定なんだから、もう少し料理シーンを重視してもらったほうが、ありがたみが出たと思います。いろいろ残念でした。

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posted by あにあむ at 15:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 電撃文庫

2017年02月03日

だれがエルフのお嫁さま?


著者:上月司
出版社:電撃文庫
だれがエルフのお嫁さま?

主人公は、百年ぶりに生まれた男エルフ・クルト。男エルフは数が少ないというだけでなく、その子供はとびきり優秀になるという珍しい存在。そのため、子供目的で結婚を望む女性がたくさん現れて… なんだかんだで、貧乳を気にしているエルフのティア、スタイルがよく可愛いけど常識が欠落している食人種のゼア、年齢にコンプレックスをもつ元皇族で魔法使いのイツミと一年限定の共同生活を送ることになり…

あらすじでは面白そうだったのですが、何度か途中で読むのをあきらめそうになる作品でした。そういえば、この作者さんの作品って過去にも同じような思いをした記憶がありますね。

一般的なファンタジー世界とは異質の世界になっています。クルトはエルフ(母)と父(人間)の間に生まれたいわゆるハーフエルフなのですが、この世界では、生まれてきた時にどちらかの種族になるようです。ということは人間の血はどこにいくのでしょう? またエルフも変わっていて、誕生時は性別が分化していない状態で、いわゆる思春期(作品内では第二次性徴)を迎えた時に、性差が分化。男性に分化したエルフは、その後数年〜十年かけて、男性機能を備えていく(つまり、ナニが生えてくる)という設定になっています。なので、分化したてのクルトには、外性器がなく当然子供も無理です。じゃあなぜ「共同生活」ということになるのですが、「異性から性的刺激を受けると、成熟が早くなる」という設定があるからとなっています。うーん、回りくどいなあ。このあたりで読むの嫌になりかけました。

ヒロインズに魅力がないのも、辛いですねえ。ティアは感情が読みにくい(表情があまりない)という設定なので、第三者的に見ても面白くない。ゼアは単なるビッチにしか見えない。イツミはひねくれ年増にしか…本当は「いい人たち」なんだよといいたいのはわかるのだが、描写される内容から読み取ることができない。感情が一方通行なんですよね。いろんな種族がいて、いろんな考え方があるということを強調しようとして失敗しているような…ベテラン作者さんなので、こういう作風なんでしょうね。地雷というほどではなかったですが、もう作者ごといいかな。

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posted by あにあむ at 12:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 電撃文庫