2018年02月16日

ぽんしゅでGO!


著者:豊田巧
出版社:ダッシュエックス文庫
ぽんしゅでGO! 〜僕らの巫女とほろ酔い列車旅〜

作者や、サブタイトルから推測できるように、鉄道旅がベースになった小説です。
またこの作品に出てくる大翔の実家・真名鶴酒造は、実在の酒蔵です。お酒の名前(酒精巫女の名前)も実在のもの。それはいいんですけど、酒造についての話が物語に出てこないのが残念。
主人公は、人気YouTuberを目指し上京した渡船大翔。といいますが、配信動画のアクセス数は三桁行くか行かないか、なのでいったいなにをどう勘違いしたのやら…。そんな痛い主人公のもとに突然巫女装束の美少女・美雨が現れます。どうやら彼女は、大翔のことを知っているようですが、大翔にはまったく記憶がありません。彼女は、母の使者であり、半強制的に彼は、越前大野の実家の手伝いに戻らせることに。そこへ同居人のラノベ作家(まだ出版された作品はない)の若水蓮も同行することになり、3人での電車旅が始まります。

酒蔵の息子が、家業を継ぐのが嫌で家を出た…簡単にいうとそんな話です。美雨は人間ではなく、酒精巫女という丹精込めて造られた日本酒に宿る精霊のようなもの。それぞれ、呼び出し方があり、大翔は数年前に偶然彼女を呼び出していたのでした。酒精巫女は、呼び出した主人の願いを一つ叶えてくれるということですが、そのためには日本酒の楽しさを広げることで、力を貯める必要があり、その量は彼女たちが持っている杉玉(イヤリングなどになっている)の光方で分かるようで…ベタな設定になっています。

実家に戻った大翔は、当然父親と口げんかをし、気分転換のために蓮・美雨とお気に入りの場所で乾杯したら、蓮が新たな酒精巫女を呼び出してしまいます。こちらは現代風の美少女。二人の美少女に囲まれて、楽しい旅が始まります。

後半は、東京に戻る際、shu*kuraという観光列車内の出来事が中心になっており、別に同行者が酒精巫女である必然性はありません。というか、全体的にあまり酒精巫女である必然性がない作品ですね。もっと必然性がないのは、酒精巫女が身につけている杉玉を触ると、酒精巫女が(どうやら)性的快感を得るという設定。もしかしたら、杉玉の神聖性を強調したかったのかもしれませんが、逆効果ですね。
大翔が、門前の小僧で、日本酒に詳しいというのは理解できるのですが、そこまで詳しい彼がなぜ、東京で三増酒的安酒しか飲んだことがないのか、またそれで日本酒を避けていたのかが理解できません。最近の居酒屋であれば、それなりにおいしい地酒が、お手頃価格で飲めますし(というか、以前のような大量生産三増酒を出す店のほうが少ないのでは?)、飲んだことがなくとも「味がまったく違う」ことは想像できそうなんですけどね。大翔と蓮が、あまり酒量飲めないのは問題ないですが、酒精巫女が「むこうの世界では、毎日お酒を飲んでいる」という割に、飲む量が少ないのが不思議。

さらに最後のエピソードも、大翔だけが気がついた理由が理解不能。なぜ「彼」は、そのことに思い至らなかったのか? 自分が生まれる前の話ならいざ知らず、数年前の話。そんなもの、少し調べればわかる話じゃないですか。特に、専門家である「彼」なら「そこにあった痕跡」を見つけられていてもおかしくない話。

以前の作品でも感じたのですが、せっかく魅力的なヒロインたちを登場させても、鉄道ウンチクにこだわりすぎて、ストーリー性を犠牲にしてしまっている感が強いです。今回酒精巫女というファンタジーなヒロインを登場させたのだから、もう少し楽しいイベントにして欲しかったですね。

鉄道ものとしても、日本酒情報としても、ラブコメとしても、中途半端でしたねえ。さらにYouTuberな設定は、もっといらんものでした。

★★☆
posted by あにあむ at 13:51| Comment(0) | TrackBack(0) | ダッシュエックス文庫
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