2017年08月24日

文字魔法×印刷技術で起こす異世界革命


著者:藤春都
出版社:HJ文庫
文字魔法×印刷技術で起こす異世界革命

ペンは剣よりも強し! といった高尚なお話でありません。
印刷屋の跡取り息子で、三度の飯より印刷が好きな青年・坂上宗一郎が主人公。いつものように修羅場の印刷所で、めまいを起こし倒れ、輪転機に巻き込まれたと思った次の瞬間、異世界に召喚されていました。トラックが突っ込むのではなく、輪転機ってのが新しいですね。でも元世界のほうは大変なことになってそうです。特に印刷所の工員さん。一生トラウマシーンですよね。
召喚したのは、少女・アイリ。彼女が住む世界では、文字が禁忌とされ、字の魔法を受け継ぐアイリの一族は、迫害され彼女が唯一の生き残り…彼女は、壊れそうになる心で「世界を変えて!」と召喚魔法を使ったのでした。とここまでは、シリアスな話になると信じていたのですが…

異世界に飛ばされた際、微妙に座標がずれて、宗一郎は倉庫の棚を突き破って落ちます。その際、棚にあった黒板もまき散らされ…そこに描かれていたのは、ハイレベルなエロイラスト… 宗一郎がそれを見ているのに気づき、アイリは大慌て。そう、そのイラスト(漫画)はアイリが描いたもの。宗一郎は、アイリが描いたえっちなイラストに文字を載せて世界中にばらまき世界を変えようとします。

やっぱりエロですか、そうですか。確かに小難しいことが描かれている本を、頑張って読むのは一部の人。でもエロはほぼ万人(特に男)に受け入れられ、イラストなら意味も分かるし、そこに文字が書かれていたら読もうとする。思春期男子が一生懸命辞書ひくようなものですね。

通常判断ができる状態のアイリであれば、断ったかもしれないこの作戦。なんせまだ少女。本当に秘密の趣味を異性に見られ、しかもそれを公開するだなんて、拷問に等しいものだったと思います。ただ、彼女は追い詰められていたこと、また本当にイラスト(エロ)を描くのが好きだったことから、受け入れていきます…って実際のストーリーには、シリアスさはまったくありません。もうすがすがしいくらい、自然に話が進んでいきます。

もちろん、手書き原稿をばらまくのでは効率が悪すぎます。そこで、宗一郎は、ドワーフ職人の力を借りて、印刷機を作り上げていきます。文字がないので、当然印刷という概念もない世界で、あり合わせのものと宗一郎の知識だけで、印刷所ができていくのはおもしろいですね。

取り扱っているのはえっちなイラストですが、この作品にはサービスシーンはありません。それがいまのところ成功しています。無意味なサービスシーンがあると、そこでストーリーが途切れてしまいますが、この作品にはそれがない。またテーマはかなり重いものなのに、宗一郎の印刷バカと、アイリの明るさ(つきあいの良さ)によって、前向きな印象を受けます。ラブコメ要素はまだまだですが…

こういう革命も小説で読むには、おもしろいですね。

★★★
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posted by あにあむ at 11:20| Comment(0) | TrackBack(0) | HJ文庫
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