2017年08月04日

放課後は、異世界喫茶でコーヒーを


著者:風見鶏
出版社:ファンタジア文庫
放課後は、異世界喫茶でコーヒーを

主人公は、現代から転生してきた高校生・ユウ。舞台は、魔法の息吹がかかったアイテムや食物が産出される「迷宮」を中心に栄える迷宮都市、その郊外にある一軒の喫茶店となります。異世界に召喚され、勇者として活躍するのではなく、普通の生活をしているユウ。なぜこの世界に召喚されたのかも分かりませんし、家族や友人が懐かしく、元の世界に戻りたいと強く願っています。彼が喫茶店を始めたのは、現世で実家が喫茶店を経営していたので、少しでも現世に近いところで生活したいから…ユウにとって、そこが唯一「自分が存在できる場」になっています。

この世界では、もともと珈琲は飲まれておらず、まだまだお客も少ない喫茶店。それでも、珈琲の香りや、ユウが作る料理に誘われ、エルフやドワーフ、冒険者達、そして街の有力者までもが「常連」として足を運ぶようになります。その中でも一番(ユウが気になる)のは、近所にある魔術学院に通う美少女リナリア。彼女もユウに気があるようで。もっともそんな女の子は他にもいて、一番年下は小学生のノルトリ。女の子たちは、美少女ばかりで、恋の予感がする状態です。

異世界召喚ものではありますが、主人公は冒険をせず、喫茶店から出ることもほとんどない「日常系」になっています。お客さんは、美少女ズ以外、ファンタジー世界の住人たちで、中にはウサギまでいますが、彼らが求めるのはおいしい料理と珈琲。料理の素材が特殊なことを除けば、喫茶店でよく出される料理ばかりで、そちらも日常系。徹底してチートな能力を除外したことで、ユウが等身大の少年として描かれています。いきなり異世界に召喚され、自らの立ち位置をつかむのに苦労している姿も、異世界を異国(あるいは知らない街)に置き換えれば、普通にありそうなお話。リナリアたちとの関係も、甘い青春物語。日常が描かれているのですが、そこに異世界というスパイスが入ることで、面白くなっています。登場人物もバランスがよく、少年の心の成長へ向け、間接的にアドバイスする人物、異性への想いという思春期にどうしようもなくわき上がる葛藤、それらをうまくミックスした作品になっています。

「これってもう、手遅れじゃない?」
「知りません。あなた次第です。もっとも、諦めるならそれまででしょうけど」

今の世界に深く関わりすぎて、元世界との細い糸が切れてしまうことを恐れるユウ。それが原因で好意をもった女の子を傷つけてしまう。自分はなにがしたいのか? 今の自分にとってなにが大切なのか? いろいろ考えさせられる作品でした。

★★★★
posted by あにあむ at 11:36| Comment(0) | TrackBack(0) | ファンタジア文庫
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