2017年01月12日

いま、n回目のカノジョ


著者:小林がる
出版社:ファンタジア文庫
いま、n回目のカノジョ

主人公は、毎原和人。可愛い幼馴染みの詩音と楽しい高校生活を送っている普通の高校生…だけど、なぜか詩音のまわりでは、時間のループがよく発生する。それは五分から数週間といったもの。本来異常事態であるはずなんだけど、体感時間で二年分も経験すれば「ループに遭遇してもじたばたせずに、やり過ごせばいい」とい心境に達するものらしい。可愛い詩音も一緒だし…でも、転校生の神崎さんは全力でじたばたする人で…

ループがテーマの小説はよくあります。たいてい「悲劇」を未然に防ぐことが目的とされ、その結果は失敗(運命は変えられない)、もしくは成功しても代償を支払わされるという悲しいお話です。でもこの小説は、かなりゆるい日常系となっています。そのあたりが目新しく楽しいですね。

この世界でループを認識できているのは、和人と神崎の二人のみ。和人は、過去の経験からジタバタしても得るものはない。詩音に危険が及ばなければそれでいいという境地に達しています。なぜなら、ループ中に発生した出来事は、ループしてしまえば「なかったこと」になってしまうから。そう、その間に努力しても得られるものが少ない。さらに「やまない雨がない」ように、ほっておいてもループは終了する。しかも詩音と一緒にいられる。でも神崎は、その独特なコミュニケーション力のため、ぼっちのまま、むなしい時間を過ごすことになる。それが嫌でジタバタして、結局和人も巻き込んだ騒動に発展していきます。

前半は、盛り上がりもなく、詩音の敬語を使った話し方も相まって、キャラ同士が余所余所しく感じられます。神崎が引っかき回すようになり、二つ目のエピソードくらいから、うまい具合にストーリーが動き出し、どんどん面白くなり、詩音がどんどん可愛くなっていきます。スロースターターな作品ですね。導入部だけ読むと、駄作と決めつけていたかもしれません。

またラストの処理もいいですね。それまでの雰囲気を壊さず、なにも断定しないままのエンディング。それゆえ、全体がほわっとした暖かさに包まれています。後書きでは「2巻も出したい」と書かれていますが、この作品はここで終わるほうが、完成度が高いような気がします。続編がでたら、作品の完成度が下がってしまいそう。このまま、同じことを繰り返せるほど「日常系」ではないですし、かといって「ループ」の根源を突き詰めていってしまったら、最大の持ち味がなくなってしまいそう。
おもしろい作品なので、続きを読んでみたい気持ちも強いのですが、腹八分目のほうがよさそうです。

★★★☆
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posted by あにあむ at 15:49| Comment(0) | TrackBack(0) | ファンタジア文庫
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