2016年10月11日

りゅうおうのおしごと!(3)


著者:白鳥士郎
出版社:GA文庫
りゅうおうのおしごと!(3)

「あいも師匠と一緒に『おーるらうんだー』めざしますっ!
宿敵《両刀使い》に三度敗れた八一は、更なる進化を目指して《捌きの巨匠》に教えを乞います。「両刀使い」は将棋戦術の話なんですが、どうもこの人、別の意味でも両刀使いなようで…一方八一のあこがれの女性である桂香は、研修会で降級の危機を迎えます。彼女の年齢からしても、ここで降級することは、研修会をあきらめることに直結する危機です。彼女は、急激に成長していくあいと停滞する自らを比べ、焦燥に駆られます。そのため、あいに対してつらくあたってしまったり。
そんなあいも、自分が勝つことで大切な人を傷つけてしまうことがあることに気づき、勝利することに対する「怯え」を抱くようになります。三者三様に悩みを抱えた3人はどのように乗り越えていくのでしょうか?

今回は「才能」が物語の根幹になっています。努力すれば、高みに向かうことはできる。でも持って生まれた才能の差によって、到達できる高みが異なってしまう。日常生活でも嫌というほど味わうことです。好きなものに対する才能がなければ、どこかであきらめる日が来る。でも才能あるものも、その才能故悩みを抱えているのは同じ。八一は、宿敵に勝つための成長、そしてあいは「相手をつぶしてしまう」ことへの恐怖の克服、桂香は勝つために行ってきた研究が原因の停滞。それ以外にも「捌きの巨匠」こと振り飛車の名手・生石充の才能なき娘・飛鳥。それぞれが抱えた悩みは自ら打開していくしかない。

今回は、今までの軽い感じの話から、急に重い話に変わりました。でも、それが理解できる重さ。誰もが形は違えど苦しんでいる事柄。負けることで夢破れていく人。勝つことで、自らを追い込んでいく人。でもこの作品に登場する人物たちは、それぞれが精一杯生きています。それが気持ちのよさにつながっているんでしょうね。

将棋は知りません。でも十分に楽しむことができる作品です。これからも楽しみな作品です。

★★★★
posted by あにあむ at 11:59| Comment(0) | TrackBack(0) | GA文庫

だからお兄ちゃんと呼ぶなって!


著者:桐山なると
出版社:ファミ通文庫
だからお兄ちゃんと呼ぶなって!

主人公・蓮杖アキが病室で目を覚ますところから、物語がスタート。そこには、息をのむような美少女が。その美少女が誰かだけでなく、自分が「誰」なのかすら思い出せない。そんな彼に美少女は萌々と名乗り、アキの妹だという。アキは事故に遭って、それから1週間ほど意識を失ったままだったらしい。診察した医者は「外傷性の逆行健忘」すなわち記憶喪失であると断言します。アキを待っていたのは、記憶を取り戻すためという理由で萌々から与えられる過剰なまでの妹の愛! 果たして…

すごく読後感が悪い作品です。主人公が記憶喪失。これはよくある設定です。で、妹のことすら忘れており、その妹に恋をしそうになる。まあありそうだね。この作品は、その妹が兄に対して、過剰なまでの愛を注ぎ、それ以上に事故前のアキ本人が、病的なまでのシスコンだったという設定がついています。スキンシップは当たり前。下手したらお風呂も一緒。部屋の壁や天井には妹の写真がぎっしり。そんな性格だから、学校では友人もおらず、完全に浮いた存在。いやそれ以上に嫌われていた模様。
で、事故後のアキは、すごく常識的な思考になっており、妹からの愛情に辟易としています。普通なら「まともになった」と喜ぶべきところですが、妹は「以前」に戻そうと必死になります。このあたりから「ズレ」が生じ始めます。そう妹が単なるブラコンではなく、非常に病的なものを抱えている(すでに心が壊れている)ことが浮き彫りにされ、アキが入院していた病院の院長も非常に怪しい。そもそも事故自体が仕組まれたものだったのではいか? 疑心暗鬼が募ります。それでも、ラブコメっぽいノリで進んでいくのですが、ラストで…

この作品は「萌々にゅん」とかラブコメ(バカ)臭がするものの、実際はサイコホラー作品です。だから読後感が悪いんだ。そういやこの作者さんの前作も一見ラブコメ、でも実は…って作品だったなあ。行き過ぎた愛情は、気持ちのいいものではありません。もう続編はいいや。

★★
posted by あにあむ at 11:24| Comment(0) | TrackBack(0) | ファミ通文庫