2017年08月11日

元勇者、印税生活はじめました。


著者:霜野おつかい
出版社:GA文庫
元勇者、印税生活はじめました。〜担当編集はかつての宿敵〜

異世界の危機を救った、元勇者・刃桐創一、救った世界でちやほやされる間もなく、現代日本に戻された彼は、異世界での冒険をそのままライトノベルに仕立て上げた!実体験を伴うリアルさが絶賛され、即デビュー&人気作家の仲間入りを果たします。しかし、調子乗って、すべての経験を3巻で出し尽くしてしまったため、まったく書けなくなります。さらに、デビューからずっと助けてくれていた担当編集さんは、産育休入り。代わりについた担当は、新人さんで、さらに…

「お前、倒したはずの破壊神だろ!?」

そう、新担当は異世界でのラスボスだった破壊神・梨々だった。彼女は、創一に負けた後、現代日本に転生させられ、その大半の力が使えない状態。そこはラノベのお約束で、梨々は、創一と同年代の超絶美少女。もともと破壊神として君臨していた彼女が、おどおどする姿は、それはもう…独特の口調になっていますが、それがなければ、さらにもう…なわけで… 創一はうまく続きが書けるのか?

タイトルからは、ラノベ業界内輪話かなと思ったのですが、ほとんど業界話は出てきません。創一が異世界で勇者やっているときにかかわった人物が、現代日本に集まっており、彼女たちとキャッキャウフフしながら、作家としての階段を上がっていく(のか?)創一の姿が描かれています。

創一は、ラノベ主人公のようにモテないと愚痴っており、異性から好意を向けられたら、気がつかないはずはないと言い切っておりますが、実際は典型的なラノベ主人公属性です。まわりの美少女たちにどんどんフラグをたて、さらにフラグの上にフラグを建築するというジゴロ。しかし、そのフラグにまったく気がつかないという…梨々なんて、どこから見ても、創一にデレデレなんですけどねえ。真白も同様。なんなら妹までデレているのに…ま、異世界で勇者やるくらいだから、鈍くないとダメなんでしょうね。

やばい内輪ネタもないですし、展開もわかりやすいものです。でもそれが、作品に安心感を与えています。ありきたりのようでいて、この作品にしかない「色」があり、熱血・ラブコメ・エロコメがバランスしているので、非常に面白い! 次巻もあるようですし、このままいくと、現代日本に創一ハーレムが構築されそうですね。

★★★★
posted by あにあむ at 10:08| Comment(0) | TrackBack(0) | GA文庫

2017年08月09日

大国チートなら異世界征服も楽勝ですよ?


著者:櫂末高彰
出版社:MF文庫
大国チートなら異世界征服も楽勝ですよ?
  替え玉皇帝になったので美少女嫁も豊富です。

長いタイトル。さらに第一章が上長だったので、これは失敗と思ったのですが、我慢して読み続けると、面白くなってきます。

主人公・日和常信が目覚めると、異世界に召喚されていた…異世界召喚ものです。常信が召喚された理由は、先頃暗殺されてしまった皇帝とうり二つだったため。皇帝の替え玉として召喚されたのです、そのため、チートな能力はなにも身についておらず、現実世界での平凡な能力のみ。その上、召喚時に召喚主である帝国の姫・パオラにより従属魔法により自由を奪われてしまう…はずだったのに、パオラがいい子(別名アホな子)だったため、なぜかパオラが常信のいくことを聞くという従属魔法が、パオラにかかっており…実質的に自由な身となった常信は帝国内を見て回ると、国土は大陸の8割以上を占め、人口や資産は他国全てを集めたものの千倍をほこり、滅ぼした国は万を超えるという超大国。当然内部では、大会社病が蔓延しており、老害がはびこっていました。果たしで常信はこの国の危機を物量によって立て直すことはできるのか?

この作品の成功ポイントは、ヒロインズが生き生きしていることですね。パオラ以外にも、天才猫耳幼女や姫騎士などなど…少しオーバーではというほど、デフォルメされたキャラですが、物語の壮大(なおバカさ)さとうまくマッチしています。タイトルがネタばれしていますが、力がなくても圧倒的物量があれば、チートな能力に勝てるというストーリーは面白いですね。「ないものをあるように見せる」のではなく、本当にあるのだから、タチが悪い…バカな戦法なんだけど、なぜかすっきりするという不思議な感覚がありました。

残念だったのは、パオラの設定ですかね。見た目の年齢(中学生くらい?)に比して、非常に幼い話方をしています。異世界なので、実は話方は年相応で見た目がと思っていたのですが、途中で「昔はそうでなかった」という言葉が出てきます。兄である皇帝が暗殺されたことで、そうなってしまったと…けど、途中からその設定がどこか行ってしまったようで…意味深な割においてけぼりだなと。あと従属魔法。相手に命令されたことを履行するまで、性的快感を得るというもののようですが、これって命令を聞くということにつながるんでしょうか? 普通苦痛を与えますよね(悟空のわっかみたいに)快感だったら、履行したら与えられるご褒美にしないと、意味がないのでは?

最後に…常信は平凡とか、チート能力がないといっておりますが、これだけの大国をコントロールできているということは、ものすごく非凡な能力をもっていますよね。さすがラノベの主人公というべき存在です。

★★★
posted by あにあむ at 16:50| Comment(0) | TrackBack(0) | MF文庫

2017年08月04日

放課後は、異世界喫茶でコーヒーを


著者:風見鶏
出版社:ファンタジア文庫
放課後は、異世界喫茶でコーヒーを

主人公は、現代から転生してきた高校生・ユウ。舞台は、魔法の息吹がかかったアイテムや食物が産出される「迷宮」を中心に栄える迷宮都市、その郊外にある一軒の喫茶店となります。異世界に召喚され、勇者として活躍するのではなく、普通の生活をしているユウ。なぜこの世界に召喚されたのかも分かりませんし、家族や友人が懐かしく、元の世界に戻りたいと強く願っています。彼が喫茶店を始めたのは、現世で実家が喫茶店を経営していたので、少しでも現世に近いところで生活したいから…ユウにとって、そこが唯一「自分が存在できる場」になっています。

この世界では、もともと珈琲は飲まれておらず、まだまだお客も少ない喫茶店。それでも、珈琲の香りや、ユウが作る料理に誘われ、エルフやドワーフ、冒険者達、そして街の有力者までもが「常連」として足を運ぶようになります。その中でも一番(ユウが気になる)のは、近所にある魔術学院に通う美少女リナリア。彼女もユウに気があるようで。もっともそんな女の子は他にもいて、一番年下は小学生のノルトリ。女の子たちは、美少女ばかりで、恋の予感がする状態です。

異世界召喚ものではありますが、主人公は冒険をせず、喫茶店から出ることもほとんどない「日常系」になっています。お客さんは、美少女ズ以外、ファンタジー世界の住人たちで、中にはウサギまでいますが、彼らが求めるのはおいしい料理と珈琲。料理の素材が特殊なことを除けば、喫茶店でよく出される料理ばかりで、そちらも日常系。徹底してチートな能力を除外したことで、ユウが等身大の少年として描かれています。いきなり異世界に召喚され、自らの立ち位置をつかむのに苦労している姿も、異世界を異国(あるいは知らない街)に置き換えれば、普通にありそうなお話。リナリアたちとの関係も、甘い青春物語。日常が描かれているのですが、そこに異世界というスパイスが入ることで、面白くなっています。登場人物もバランスがよく、少年の心の成長へ向け、間接的にアドバイスする人物、異性への想いという思春期にどうしようもなくわき上がる葛藤、それらをうまくミックスした作品になっています。

「これってもう、手遅れじゃない?」
「知りません。あなた次第です。もっとも、諦めるならそれまででしょうけど」

今の世界に深く関わりすぎて、元世界との細い糸が切れてしまうことを恐れるユウ。それが原因で好意をもった女の子を傷つけてしまう。自分はなにがしたいのか? 今の自分にとってなにが大切なのか? いろいろ考えさせられる作品でした。

★★★★
posted by あにあむ at 11:36| Comment(0) | TrackBack(0) | ファンタジア文庫